古いものが好きな私たち。
結婚を前にして、一緒に暮らす住まいを探していたときに
偶然に出会ったのが、廃墟寸前だった築90年以上の元歯科医院。
近代建築の面影の残るこの建物に、不思議な縁を感じて
ここで二人、夫婦として暮らすことを決めました。

建造されたのは昭和初期。
できるだけ当時の風合いをいかしながら
この先も、長く心地よく暮らせるようにと手を入れる日々。
自分たちで壁を塗るのは大変だったけれど、今ではいい思い出。
ぐるりと部屋を見渡すたびに、あの頃の記憶がよみがえります。

どうしても残しておきたかった天窓に、アーチ型の窓枠。
もともと診察室だった空間には、私たちが大切にしてきた
アンティーク雑貨や古道具をディスプレイしました。
棚の壁紙を貼り替えたり、古家具を磨いたり
今もなお、自分たちらしい住まいづくりを楽しんでいます。

街を歩くことが好きになりました。
窓から見える風景が好きになりました。
この住まいだから、好きになれたことがたくさんあります。
愛しいものに囲まれながら、穏やかな暮らしを営む。
これ以上の幸せはないんじゃないかなって、そう思うんです。

今はおぼつかない足取りでも、やがては
この庭を思いきり走りまわる日がくるでしょう。
そんな息子の成長を、日当たりのいい縁側で
夫婦そろって眺めてみたい。
私たち家族の物語は、これからも、この住まいと共にあります。